告別式がその人らしく、自由にできることが広まると、いろいろなイメージをそこに求め始める人が出てきました。
故人生前の趣味や生き方を反映する趣向や遺された方々の想いなども形にするようなお葬式のスタイルが出てきました。
お葬式の中でも「葬儀」はご遺体が伴うことから、一定の手順で進められ、同時に多くは仏教的な宗教儀礼が伴い、読経や戒名授与なども行われていますが、それとは別に告別式としての施行を、一般会葬者を交えて行うことも増えてきました。
中でも音楽葬は、そのイメージや雰囲気からもっとも好まれた告別式の手法です。
具体的には、葬儀を身近なもので済ませた後、いわゆる一般焼香にあたる部分を読経ではなく故人の好きだった音楽などを奏でた中で、献花をしていただくなどその礼拝方式もスマートな方法になっています。
音楽とはいっても様々なジャンルがあるので、あまりそれをごちゃ混ぜにしたような演出は好みませんが、邦楽では琴や三味線、あるいは尺八などの和楽器と詩吟の吟上などもしみじみとした情感があります。
また洋楽ではクラッシックが基本です。なかでも弦楽四重奏など、比較的小さなユニットでその会場への移動などがたやすいものが施行しやすいと言えます。
曲目は好みですが、特段マイナーで、葬送にちなんだものでなくても構いません。
これまでの進行事例では、・G線上のアリア(バッハ)・別れの曲(ショパン)・オーぜの死(グリーク)・ハレルヤ(ヘンデル)・メヌエット・ラルゴ(グリーク)・ソルベーグの歌(グリーク)・白鳥(サンサーンス)・冬(ビバルディー)・家路(ドボルザーク)・タイースの瞑想曲(マスネー)・トロイメライ(シューマン)・カノン(パッフェルベル)・アベマリア(シューベルト)・シチリアーノ(フォーレ)・牧神の午後への前奏曲(ドビッシー)など多様です。
葬儀を家族だけの「密葬」で行い、後日ホテルなどで「本葬」として行われる告別式などは、その進行に特に制約があるわけではないので、自由に進めることができます。
装飾も遺影があればそれで十分かもしれません。
音楽葬の場合、大切なことはBGMの場合と、その曲そのものが「献奏」となるばあいがありますので、その区別を十分にすることが肝要です。
日本葬祭アカデミー教務研究室 二村 祐輔 ※無断転載禁止