「葬儀」の手法は大きく二種類しかありません。
仏式、キリスト教式、神葬祭などの宗教的葬儀と無宗教葬儀の二つに大別されます。
古代でも何らかの土着的な民俗信仰や呪術的対応などを踏まえて、宗教的な作法に基づいて葬送儀礼がなされていたものと思われます。
ここで云う無宗教葬儀は、現在の日本で、たとえば宗教的なかかわりを一切排除して、「葬儀」そのものを献花や黙とうなどで済ませるような場合を指して、これを「無宗教葬儀」としています。
さて、告別式ですが、一体告別式とは何でしょう?
「告別式」は、その文字のとおり「別れを告げる式典」です。
その対象は、遺された私たち家族(遺族)。それをとり巻く地域社会や故人の人間関係など、実存したものの過去と現在とその将来をもとにした、今生きている私たちのための行いごとです。
つまり「節目や変わり目」を意識するため、させるため、の行いと云うことが出来ます。
たとえば、入学式や卒業式のようなものでは宗教性がそこに反映されることは少ないようです。
具体的に云えば、「告別式」という式典の目的は、「葬儀」より理解しやすいかもしれません。
なぜなら、日常的な感覚で表現できる事柄ばかりだからです。
「葬儀」とは異なり告別式は式典ですから、特段に宗教とのかかわりは意識することはありません。むしろ無宗教的な施行が一般的です。
式典として人為的な施行がなされたのは歴史的に記録されています。
1904年(明治34年)に、東洋のルソーといわれた思想家、政治家の中江兆民の葬儀の際に行われました。
これは生前の申し伝えとして、逝去の際、死んだらすぐに火葬場で荼毘伏すように遺言したため、葬式が行われなかった。
それではあまりにもけじめがつかないこともあり、中江の死を悼んだ人たちによって、いまの青山斎場(青山墓地)にて、無宗教式による追悼記念会が行われ、それを「告別式」と称したことから始まると云われています。
その影響もあり、大正時代に大いに告別式が普及しました。また、関東大震災以後、都市部葬式では、寺院や葬儀所までの葬列を廃止し、代わりとして自宅での告別式が行われるようになりました。
いまでは、通夜・葬儀・告別式の区分がされにくく、直葬や家族葬など小規模な範囲で行われるようになってしまいました。
あらためて、その人らしい、自由な告別式の在り方が問われ始めたと言っていいでしょう。
日本葬祭アカデミー教務研究室/二村祐輔