いろいろ

「死」を表す日本語の多様性

誰もが、あまり口にしたくない言葉に「死」があります。

 縁起でもない!として数字の4や42なども日常生活の中では禁忌の一つです。

けれども一方で、日本語ほど「死」にまつわる言葉使いを持った国はありません。

読者の皆さんはどのくらい思いつきますか。

「人が死んでしまう」ということについて、たとえば「目を閉じる」、あるいは「永眠」という言葉もあります。

なんとなく婉曲な言い回しです。

同じように、「息を引き取る」、「事切れる」、「人生を全うする」「天に召される」、「瞑目」、「永逝」などの言葉があります。

仏教では「引導を渡す」ことから始まって、「往生する」、そうして「涅槃に至る」、これも単独ではすべて「死」を表す言葉です。

この他には「寂滅」、「入定」、「帰寂」,かみくだいては「極楽に行く」、「成仏する」などといいます。

高貴な方が「ご逝去」されると「遷化」、「身罷る」、「お隠れになる」あるいは「崩御」などの言い回しがあります。

また乱暴な言い回しとしては、「一巻の終わり」、「おさらばする」、もう少し荒っぽく「くたばる」。

あまり使えませんが、モノが壊れたりする時に「オシャカになる」などと言いますが、お釈迦様に対して失礼な話です。

似通った言葉では「お陀仏」も同じようです。

キリスト教的には、「昇天」など独特な言葉もあります。

また儒教的には、「鬼籍に入る」。すなわち「鬼」は死者のことを意味しています。

おそらく私たちには、「言霊」(ことだま)という観念があって、「死」というものを直截的には口にしたくなかったのでしょう。

ほんとうに婉曲な表現が多種ありますね。

 学者によっては、この言葉だけで一冊の辞典が出来る程、日本語の死にまつわる表現は多いのだそうです。

葬儀の景色を眺めると、「お迎えが来た」、火葬場へ行けば「灰になる」。

そうして埋葬では「土に還る」ということも、やはり死を表しています。

また死を美化する表現もあります。

「花と散る」、「玉と砕ける」「空に帰す」などいろいろです。

さあまだまだ続けます。

「他界する」、「不帰の客となる」、習俗的には「旅立つ」、「あの世に行く」・・・みなさんはいくつくらい思い浮かびましたか。

日本語の表現の豊かさを感じてもらうと幸いです。

ちなみに若い学生に聴いてみたところ、さすが女の子らしく

「お星さまになる」と答えました。

さて、英語では?フランス語では、中国語では?・・

その国の「死」を意味する言葉を探ってみると、その民族の死生観がみえてきます。

出稿:日本葬祭アカデミー教務研究室 二村祐輔

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